下町・すみだで焼菓子カフェを経営する末弘さんの、お菓子や集う人への思い、そしてこれからの目標とは。

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15 末弘麻里子さん [後編]

スカイツリーのお膝元・墨田区で、外国人も多く訪れるゲストハウスのカフェ『torinos』のオーナーとして焼き菓子専門店を構える末弘さんの、独立までの足取りと、これから。
|開店までの経緯|

いろいろなご縁に恵まれて。

―卒業してすぐに独立されたんですか?

いえ、最初は製菓材料の卸商社に入りました。学校に求人は来てなかったんですけど「ここで働きたい」って思って就職課の先生に相談したら、つないでくださって。ちょうど、その会社でアンテナショップみたいな店舗が立ち上がるときで、お店に厨房があって、焼き菓子をつくって、その場で材料の量り売りをするっていうことをやろうという店舗。結局、そこの製造責任者をやってくださいって言われて、すごくラッキーでした。いろいろな経験が積めましたが、私の場合は入っていきなり製造責任者っていうポジションだったので、通常の現場で経験を積むっていうのとはちょっと違う感じではありますけど(苦笑)。レシピを自分でつくって試作を本社に送って「どうですか?」「じゃいきましょう」みたいなプレゼンや打ち合わせも全部やっていました。ある意味、独立してお店やってるのと近い感覚だったかもしれません。結果的に、ここでの経験がいまのお店のスタイルにもつながりました。
 


 

 

―開店までの経緯を教えてください。

製造責任者の仕事は3年やっていましたが「そろそろ独立の準備に入ろう」ということで退職し、蔵前にあるチョコレート屋さんでアルバイトをしながら物件を探し始めました。で、この近くに『ムームーコーヒー』と『サテライトキッチン』っていうカフェがあるんですけど、そこのオーナーの子たちと仲良くなって、いまのこの物件を紹介してもらったんです。すでにゲストハウスのオーナーが「ここでやりたい」手をあげられてる状態でしたけど、よくよく話を聞いてみたら「1階に何かお店を入れることを考えてる」っていうことだったので、入らせていただくことになりました。


そこから開業準備は9か月くらい。店舗の内装とか機材の手配とかを相談しながら進めていきました。機材はいくつか見積もりをとったりしたんですけど、結局昔のツテをたどって声をかけさせてもらった製造責任者時代の業者さんにお願いすることに。しかも、私が辞めた直後にアンテナショップがクローズしていて、私が当時に使っていたオーブンとかをそのまま中古で引き取るという(笑)。「これもまたご縁だな」って思いました。

焼き菓子のお店をやろうっていうのは最初から決めてたし、派遣での仕事をしながらずっと試作なんかはやっていたので、そこはわりとスムーズでした。まあ、とにかくあっという間でしたね。

|お店のこだわり|

気持ちの良い素材と、四季の果物。

―お店のこだわりポイントは?

材料はすごくこだわって選んでいます。例えば卵だったら、平飼いの卵。スーパーなどではほとんど売られていないですけど、狭いケージで身動きが取れない状態で飼われてるのではなく、広々とした場所で飼育され、健康な状態で産んでくれた卵です。そういう、品質的に「気持ちの良いもの」を使いたいと思っていて。
 


小麦粉も国産だったり、お砂糖も白砂糖じゃなくきび砂糖を使ったり。どうしても白い砂糖が欲しいときは、てんさい糖のグラニュー糖を使ったり。きび砂糖は茶色いお砂糖なんですけど、グラニュー糖みたいなさらっとした甘さじゃなく、独特の風味があって少しクセがあるので、お菓子屋さんでは一般的にあまり使われない素材。でも、天然由来とかにこだわりがあるんで。味もそうですけど「白いお砂糖は体を冷やす」って聞いたことありません? いま、白いお砂糖は摂っていませんっていう人が増えているんで、そういう面も気にかけています。

 


そうした「食べて気持ちの良い素材を使う」ことと、「季節の果物でお菓子をつくりたい」ということ。日本で、日本人の私が、日本に根差した、日本の四季に合わせたその時々の果物を使って、人が食べたいものをつくりたいなと。いつもお願いしている八百屋さんがオーガニックや減農薬の野菜に強いので「いまこんなのあるよー」とか「こういうのがお勧めだよ」とか教えていただいてます。

なるべく国産のもの、ということを心がけてはいますが、海外のものも使います。ガチガチになりすぎると「こだわり強すぎ」になるし、お菓子の楽しさが半減してしまうので。

|すみだへの思い|

外から人を呼べるお店に。

―お店の感じや人の雰囲気、自然な感じでいいですね。

ありがとうございます(笑)。イートインスペースは上の階にあるゲストハウス兼用のスペースなので、別にここでコンビニで買ってきたカップラーメン食べててもいいんです。でも、ここでお菓子とかドリンクを売ってるのを見ると興味をそそられるのか、わりと頼んでくれますね(笑)。そういう人たちといろいろお話ししたりします。小さなゲストハウスだからコミュニケーション取りやすいので、Facebookでお友だちになってその後も交流があったり、この界隈のコミュニティにも紹介して一緒にご飯食べたり。そういうことが自然とできちゃう環境はあります。
 

 


 

―お店をやっててよかったな、と思うことは?

やっぱり、いろんな人が来てくれること。普段はそれこそ焼き菓子屋さんとかに行かないような、おじいちゃんおばあちゃんが来てくれて、ちょっとお茶飲んでってくれたり、クッキー買ってってくれたり。下町っていうのもあると思うんですけど、地域での人のつながり感がすごくあります。最近は若い人たちもたくさん移り住んできて、そうした人たちとの自然発生的なコミュニティも楽しんでいます。いろんなイベントをやってくれたりとか、ここで新たに出会って、つながりが広がっていくのを感じると「やっぱりすみだでよかった」と思います。

 



 

―すみだ愛、強いですね(笑)

ですね(笑)。全然地元じゃないんですけどね。本当にここにいるのがただ楽しくって。最近は休日もすみだから出なくなっちゃって、居心地がよすぎるのもどうかと思うときもあるくらい(笑)です。お店とお客さんの距離感が素敵なんですよね。東京であって東京じゃない、みたいな別世界。たまに勉強のつもりで渋谷や新宿とか都心のカフェに行くんですけど「あれ、何か違うな」って。すみだのコミュニティ感は違いますね、安心感が。

これからの目標は「外から人を呼べるお店に」なれればと。具体的に「こういうイベントに出たい」とか「こういうことしたい」っていうのはないんですけど、雑誌に載せていただいたりとか、言い方ヘンですけど(笑)都心の方のイベントに出させていただいたりとか、チャンスがあったらやりたいです。それで外から来てくれた人がこの『すみだ』に興味を持ってくれたら嬉しいな、って思ってます。

焼菓子torinos

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曳舟と小村井駅の間にある古民家を改装したカフェ。2Fはゲストハウス、1Fがカフェになっている。安心素材にこだわった焼き菓子のほか、店内ではドリンクや皿盛りのデザートも楽しめる。


〜末弘さんのオススメ〜

15_torinos03.jpg「piyoメレンゲ」
平飼い卵の美味しさが詰まったpiyoメレンゲは、サクサク食感が人気。


15_torinos04.jpg「toriクッキー」
末弘さん自らがデザインしたかわいい型抜きのクッキーは定番商品。


15_torinos05.jpg「皿盛りデザート」
イートインでしか食べられない皿盛りのデザートは季節のフルーツもいっぱい。


墨田区八広2-47-14
水・木・金・土曜|11:00〜18:00、日曜|8:00〜18:00
月・火曜定休

https://ja-jp.facebook.com/torinosbakery/




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